官製ワーキングプアを考える!(2017年11月定例会)
10月1日、兵庫県の最低賃金は時給819円から844円になりました。大阪では883円から909円に、最高額は東京の958円、最低額は福岡を除く九州と沖縄で737円です。その地域差に驚きますが、全国平均の848円で年間2000時間働いたとしても年収169万6000円で、とても生活できる賃金ではありません。
普通に働けばまともな生活ができる、こんな当たり前の要求が経済大国日本では通用しないのです。時給を直ちに1000円に、さらに1500円にというスローガンが常識離れだとされ、むしろ使用者側の支払い能力への配慮が優先されています。最近の求人情報では時給850円というのが増えましたが、なかには844円とか845円というものも散見されます。
自治体の雇用環境でも、正規職は減少して非正規職が増え、委託や指定管理者制度なども含め、官製ワーキングプアを生み出しています。首長選でも、公務労働の切り下げ発言する候補が市民の支持を得るようになっています。これらは、非正規職に象徴される労働環境破壊の蔓延が、まともな労働環境への敵意を煽っているからです。
こうしたなかで、「参与連帯」の事務局長として手腕を発揮した進歩的弁護士からソウル市長になった朴元淳氏は非正規職の根絶(非正規職の正規職化)をめざし、2015年1月には「生活賃金条例」を制定しました。これは「自治体とその関連機関が直接雇用する低賃金労働者を対象に、最低賃金より2割〜3割程度高い賃金を設定するものです」(脇田茂龍谷大学教授「非正規職根絶を目指す、ソウル市の労働政策」)
資料として「ソウル市の基本政策」を配付していますが、社会福祉予算の拡大、公共賃貸住宅の供給、国公立保育園の割合拡大など、何でも民営化で切り捨てていく日本の自治体の方向性とは大違いです。行政の姿勢が市民に向いているか企業に向いているかの違い、この違いはどこから来ているのか脇田氏は次のように言っています。
「私は、ソウル市の労働政策を知るほどにうれしい気持ちになりました。そして、美濃部革新都政が、一つのモデルになっていることに複雑な思いもしました。日本では『過去のもの』とされ、マスコミなどでは『嘲笑の対象』にしている革新自治体の優れた福祉政策が、現在のソウル市で活かされていたからです。グローバル経済が広がった現在、東アジアに位置する日本と韓国は、きわめて類似した条件の下に置かれています。朴槿恵・中央政府の労働政策は、日本でもこの数十年強行されてきた労働法規制緩和や、闘う労働組合弾圧の政策と共通してると思います。しかし、朴元淳・ソウル市長の労働・社会政策を知れば知るほど、その内容だけでなく、政策の作成・実現を支える市民団体・労働団体の存在、研究者、法律家(弁護士、公認労務士)など専門家の参加と献身的な努力に魅力を感じました。非正規全国会議としても、韓国ソウル市の労働政策や市民団体の活躍に学んで『労働が尊重される日本、効率を理由とする非正規雇用利用の根絶』を目指して大きな役割を果たせればいいと考えます」
さて、過去に「公契約条例に関する研究」を行い、その制定から撤退した西宮市行政、そして現在の今村市政はどうでしょうか。また、私たちの姿勢はどうでしょうか。